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ボタンBで考えた作者の思い

「ボタンB」鑑賞授業2014  6年生図画工作
ボタンBで考えた作者の思い_c0052304_08462465.jpg
1時間の授業で、なるべく子どもの力で、どこまで思いを読み取れるか。なるべく教師の教え込みは入れず、考え話し合う中で。

まだ修学旅行に行っていない子どもたち。(本校は10月に長崎に行く)歴史でもまだ近代史の戦争の時代までは学んでいない。

そんな小学生がどこまでできるのかな?そう思いながら取り組んだ授業。



真髄まで行くには、やはり難しさを感じた。
しかし難しいからこそ次へのステップを考える意欲がわく。

子どもの感想から率直に受け止め、次へつなごう。

学習シートを読む。
「原爆の恐ろしさや苦しみ悲惨さを伝えている」というように
「原爆」という言葉を使っていた児童は21人(22人中)。
残りの一人も「一人一人の命を大切にする」という言葉でまとめてはいるが、
授業中の発言で
「浜田さんてどこの人ですか?原爆にあった事があるんですか?」
と積極的に発言しており、作者の思いを感じ取っている。

この作品はこれからの核戦争への恐怖を表している。
ボタンを押そうとしている3人の人物のポーズと関係、
そして3人のそれぞれの姿の表し方に作家の意図がある。
もちろんその根底には、広島や長崎の原爆投下という日本人の体験と
戦地に赴き苦しい思いをされた浜田さんの体験がある。
小学生には、後半の思いに触れられたら
本時のねらいは概ね達成と考えていた。
そしてもし、前半の部分を読み取る事ができる子どもがいれば
本時のねらいは十分に達成であると。

その意味では、全員がねらいは達成でほっとした。
では、それ以上に深く読み取る子どもがいたかどうかを検証する。

感想の他の部分を書き出してみる。
ボタンBで考えた作者の思い_c0052304_08485741.jpg
3人の関係の表し方の捉えで最も多かったのは以下。
・原爆によって目が見えなくなったりやせ細ったりしているところを表している。
・放射能でやせて行く人の気持ちが表れている。
・目が見えない人や体の一部が亡くなった人たちの姿。
・右から順にひどくなっている様子。
というように3人を核戦争の被害者として表していると言う意見である。(約2割)

これは表現の意図とは若干違うのだが、意識とは関係なくボタンを押す立場の人もある意味戦争の被害者であろう。

また3人がつながっていると言う事から
・協力の大切さ。
・みんなで協力していくことで戦争をや原爆をなくすことを伝えたかった。
という意見が3割いた。
この絵の3人は、本来は上からの伝達と言うつながりである。
最も左側の人物には配線は頭を通らず、顔は隠れ、感情も意志も見えない。
中の人物は笑ってるように見えるが何となく悲しげである。
右の人物は子どもが気付いたように何故か体が大きく、違う椅子に座り
壁で体は後ろの世界にあり手だけを出す人物。頭の中には核の発射。
形上は協力してボタンを押している事になる。
この子どもたちは全く逆に捉えているのでうーん、と思ったものの、
むしろ浜田さんも、「人のつながりをこのようなことに使うのでなく
もっと平和的なつながりや世の人々の協力を」と言うメッセージを
含んでいるかもしれないと、子どもたちの言葉から考えた。

そんな中で
・このような事が2度とあってはならない。
・原爆の恐ろしさをより多くの人に伝えること。
・命の大切さを伝えている。
・原爆が落ちたその日に何が行われていたかを一人の目を人を使って表現している。
・原爆はこわい。このボタンはずっと続いて行く。被害にあった人たちの思いは
 ずっと続く。
・次世代の人たちに、原爆の恐ろしさや苦しさを忘れないように描いた。
というような作者の戦争に対する思いにかなり近づいている子どもたちもいた。
こういう子どもたちは、今日の授業の中では
十分に達成できたと考えてよいのではないか。(約3割)

「ボタン」という言葉を使っていた子どもはわずかに5人だった。
核戦争のボタンと捉えた子どもだけでなく、平和へのリセットボタンと捉えた
子どももいた。ああこのあたりをみんなで追究すると、この絵の本質にも
迫れたかもしれないと思う。
この作品の題名が「ボタンB」なのである。
やはり「ボタン」にこだわって見る事が、この作品の本質に近づくのかもしれない。

今回は、作品の本質に近づく子どもが少なかった事や
表現の意図を十分に読み取る子どもがあまりいなかったところに
私の指導の不備がある。
途中では「わからないあ」とずいぶん頭を悩ませてもいた。
課題作りや資料提示の方法などにかなりまずいところもあった。
だが子どもたちは、友達とかかわり合いながら、しっかり考え、
自分なりの考えを持ち、最終的には作者の思いを感じ取る事はできた。

本時のめあてに対する子どもの自己評価は次の通り。
◎ 15人
◯  4人
△  3人

思ったよりも「作者の思いをしっかり感じ取った」という子どもが多かった。
「作者の思いがまだわからなかった」(△)という子どももいたが
彼らもきちんと表現はできている。おそらく他者の意見でそうは思ったが
自分としては納得できる結果ではなかったということだろう。
それはそれで授業者としては参考となる

不足している部分は、次の時間に補っておこうと思う。
またできれば隣の学級では、今回の反省を元に他の方法で授業をさせてもらいたいと考えている。

こうやって振り返ると、子どもたちが一生懸命に学習ししていた事が
ひしひしと伝わってくる。私がもっとも学んだ研究授業だった。


by saibikan | 2014-06-08 08:49 | 6年図工授業 | Trackback | Comments(0)


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