◆ ソーラン節に魅せられて(前編)

日刊「中高教師メールマガジン」に掲載(10月)

■ 「子どもたちのアートワークス」(17)

◆ ソーラン節に魅せられて(前編)

 私は、8年ほど前から、運動会の団体表現にソーラン節を取り入れています。
なぜ九州なのに北海道のソーラン節?と言われそうですが、やったことのある
方なら分かるでしょう。日本のよさや踊りのよさを体感でき、体力もつく、いい
題材なのです。遠い地域のものでも、いいものはいいものとして取り入れます。

 さて、今回は、私がこれまでの教員生活で「ソーラン節」と出会ったり関わっ
たりしたことを書き綴ってみます。当然実践の中心は体育の時間です。

 今までと違って、図工・美術という視点とは多少離れていることを、まずは、
お許しください。それとともに、私が、学校で出会う子どもたちの姿や日常の
出来事を、「アート」という視点で見たり、追求したりしていることも理解して
くだされば幸いです

***************************************************************
ソーラン節の踊りを初めて目にしたのは、20年近く前。私が若手教師として
勤務していた、山の小さな小学校での運動会。ベテランのT先生の指導により、
低学年の小さな子どもたちが、少ない人数ながら「どっこいしょ、どっこいしょ」
大きい声を張り上げて、民舞「ソーラン節」を踊る姿に感心したのが最初の出
会いである。(民舞「ソーラン節」・・劇団わらび座によるソーラン節の唄と踊り)

 そして都市部の学校に異動してきた時、運動会で再度、民舞「ソーラン節」
に出会う。手作りの大漁旗とともに3・4年生の百数十人の子どもたちが入場
し、一斉に踊り出す姿は、見ていて圧巻。担当していたのは図工の専門家の
O先生であった。

 当時私は、高学年担任で体育主任。毎年、組体操と音楽を組み合わせた団
体表現の創作に没頭していた。しかし、いつか自分でも、ソーラン節をやって
みたいと思うようになったのだ。

 その後異動した前任校で、ついにその機会がやってきた。その学校の運動
会では、毎年、高学年が日本の伝統的な踊りを演技していた。5年担任にな
ったとき、同学年部の先生たちに迷わず「ソーラン節をやりましょう。」と声を
かけて取り組んだ。実際にやってみて思ったことは、やはり、「ソーラン節は
いいな」である。
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 子どもたちは必死で練習する。声を張り上げて、汗をびっしょりかきながら。
休み時間に学校内に響く「どっこいしょ」の声。家でも必死で踊っています、と
届く保護者からの便り。最初は腰を落とすことに抵抗を感じていた女の子た
ちも、少しずつ変わってくる。日がたつにつれ、腕や足が痛くなる子が増える。
しかし、踊った後に、何かしら爽快感のある表情を見せることが多くなる。そ
して、運動会本番では、それまでのがんばりの集大成として精一杯自己表
現し、多くの拍手の中で成就感と満足感を得るのである。

 指導者の方も必死である。わらび座のビデオを見て何度も動きを覚える。
覚えて演技の順番を指示するだけでは、踊りのよさが子どもたちには十分に
伝わらない。子どもたちの前で、生で、自分が汗をかいて踊りながら指導す
ることで子どもたちの目が変わってくる。(ただし、やせっぽっちの私だから、
限界はあると思いつつ・・・)

 私は「わらび座」公演を、実際に見に行ったことがある。前の方の席で間
近に見ることができた。ステージからびりびりと伝わる「ソーラン節」の生
の迫力。実にたくましい。役者さんたちの汗が飛んでくるようだった。同じ
動きをしながらも、一人一人が個性ある表現をしている。これを子どもたち
も伝えたいと思った。

c0052304_22465517.jpg

 今から3年前の運動会では、ソーラン節の前に組体操も取り入れて5・6
年合同の団体表現「海、そしてソーラン」を実践した。まずは、和太鼓が得
意な子どもの見事なばちさばきの音がグランドに鳴り響く。やがて門から駆
けてくる数人の子どもたち。手には長い青竹。竹の先には、クラスごとに制
作した大漁旗が、勢いよく風になびいている。続いて、青い法被に捻りはち
まきのたくさんの子どもたちが、「やあ!」のかけ声のあと、側転をしながら
入場。「海」をイメージした組体操の技を演じた後、最後に「民舞ソーラン節」
で締める、という流れ。終わった時の子どもたちの表情を見た時は、自分自
身の中に何とも言えない喜びがあった。
 
 そして翌年、彼らが6年生になった時、授業時数確保の意味から運動会練
習の時間が以前より制限された。高学年の表現も6年生だけになった。2ク
ラスしかない。運動会の話し合いをしている時、同学年のJ先生から、
「新しいソーラン節をやってみませんか?」
と提案があった。
「どんなのですか?」
と首をかしげる私にJ先生は
「ほら、金八先生のドラマで中学生が踊っていたやつですよ。曲は伊藤多喜
雄さんという方が歌っておられて、私はCDを持っています。他の学校の運
動会で取り入れた先生がいて、実践されたビデオもありますから見てみませ
んか?」
「ああ、聞いたことはあるけど・・・」
 そのようなソーラン節があると、以前から話には聞いていた。しかし、私は
ここのところ金八先生のドラマを見たことがなかったし、民舞ソーランが自分
の中では正統派という感覚だったので、言われるまで頭になかったのだ。だ
から、どういうソーラン節か、想像もつかなかった。
「とにかく見ましょうか。」
 早速放送室に行って、ビデオテープを再生した。

 まずは、テレビ番組「3年B組金八先生」を録画してある映像。中学生役の
上戸彩(女優)を中心に子どもたちが長い法被を着て、勢いよく踊るソーラン
節が目に飛び込んできた。へえ~、とつぶやきながら画面に食い入った。見
終わった私から出た言葉はたぶん、次のような言葉だった。
「かっこいいなあ。でも動きが速すぎる。ハードじゃないですか?これ。小学
生の子どもたちが、この踊りのよさを表現できるかなあ」

 不安を口にした私だったが、心の中では興味も湧いていた。J先生から、
この踊りに取り組んで、荒れから立ち直ったという実在の中学校の話も聞き、
きっと子どもたちが得るものがあるなと思い始めていた。

c0052304_22371226.jpg
 次に、ある小学校の運動会で子どもたちが踊っている映像。その学校の先
生がテレビを見ながら、動きを小学生用に改良したらしい。
「こんな感じなら何とかできそうな気もするな。本校なりのソーランをやり
ましょう。じゃあ今回はJ先生にお任せします。ぼくは、子どもたちと一緒
に踊りながら覚えることに専念しよう。よし、決まり。」

 こうやって弓削小学校6年生で、新しいソーラン節に挑戦することになっ
た。だが、踊ってみると、見ていた以上にハードだった。J先生は、年齢的
に私とそう違わないが、やはりエアロビも経験があるというだけあって、よ
く動く。それにこの速い動きが、私にとってはかなりハードルが高かった。

 それでも子どもたちはさすがである。あの速い曲によくついていく。何度
も踊るたびに上手くなっていく。揃っていく。しかし、子どもにとって動きが
取りづらいところが出てくる。どうしても動きについていけない子どももい
る。そんな時はJ先生にちょっとストップしてもらって、相談しながら変えて
いく。しだいに、子ども一人一人の個性ある動きも見えてくる。

 久しぶりに後ろから指導に参加すると、また違う面が見えるのだなあ、と
あらためて思った。

運動会当日には、指導者二人とも子どもに混じって踊った。動きをまだ完
全に覚えきれなかった私は一番後ろで、ではあったが。子どもたちの生き生
きとした後ろ姿を見ながら踊るのも、なかなか乙なものであった。

 あれから2年、今度は現在の小学校で、同じソーラン節に挑戦した。今度
は私が担当として。その様子は次回(後編)に。  

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by saibikan | 2005-12-28 22:23 | ソーラン節 | Trackback | Comments(0)
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