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図工授業Q1〜人物描写の仕方②


図工授業で知りたいこと、質問Q1  人物描写 に対して

②人物描写力をつけるために

では人物描写を「形をとらえて」(線描)の視点で、自分なりに考えてみます。
そもそも、人間は関節がいくつもあって、人の状態を正確にとらえて書き表すのは
かなり難しいです。先ほど述べたことからも低学年の子どもに無理な要求は
できません。3年生以上でも人物をあまりにも写実的に描かせようと
教師が必死になればなるほど子どもの自信を喪失させ、絵嫌いを生みます。

とはいえ、子どもが自分なりに人間をとらえて描き、満足するような
基礎・基本の描画力を少しでも付けてやりたいものです。そこで
大きな画用紙に時間をかけて描くような題材でなく、数時間でよいので
B4の画用紙にクロッキーをするようなミニ題材を取り入れることが
いいのではないでしょうか。
ねらいをもって、人物の格好の題材を与えて描かせてるのです。

最大の壁は時間でしょうが、クロッキーは短時間でよいのです。
たったの15分を3回しても1時間分。されど15分、1時間ですよね。
そのようなクロッキーなど基礎・基本スキルをする時間を生み出すには
各学校で教育課程や図工の年間指導計画の工夫をするしかありません。
授業の工夫でもよいです。それには次のような方法が考えられます。

1 クロッキータイム等、朝の時間の活用などで設定する。(校長・教務の同意)
2 年間指導計画の工夫で、全学年図工授業の中で基礎・基本として
  クロッキーをする時間を年数回、ミニ題材として設定する。(図工主任の計画)
3 題材内の指導時間を工夫して、基礎・基本スキルを身につける活動を
  絵画題材内に取り入れる。
  (担任の計画)
  
1は、なかなか難しいという場合、とりあえず2か3でやりましょう。
学年1時間だけ人物描写のクロッキーをすると考えた場合(15分×3回など)
荒木先生のクロッキー指導資料をもとに、自分でも、学年の系統性を考えてみました。


1年生
①形にこだわらず、遊んだことを描く。(思い出して思い切り)
②先生の顔を、正面から描く。(1本線・かたつむりのように・けさない)
③立っている先生を、正面から描く。(体全体をとらえるように。顔はあまり考えない)

2年生   
①友達の顔を正面から交代で描く。
②友達を顔と肩を横から見て描く。(横から見るときの鼻や目の位置に気付く)
③いすにすわって机の上に手を置いている友達を横から見て描く。
 (うでが出ているところやひじの曲がり)

3年生 
①友達の横顔をかく。
②いすや床にすわっている友達を横から描く。(腰とひざの曲がりに気をつけて)
③走っているポーズの友達を前から描く。(曲がり)

4年生
①手を描く。(グーチョキパー)
②床に座ってあぐらをかいたり横すわりの友達を前から描く。
③ボール(ラケット、バット)を手にしてスポーツをしている
 ポーズをとった友達の体全体を描く。(かまえ)

図工授業Q1〜人物描写の仕方②_c0052304_15455654.jpg5年生
①手を様々な方向から描く。(いろいろな形)
②ぞうきんで床を拭いている友達を横から描く。
③くつひもを結んでいる友達を前から描く。(しゃがみ)

6年生
①はさみを持ったりえんぴつを握っている手を描く。
②片手をほほに当てた友達を前や斜めから描く。
③後ろを振り返る友達を後ろから描く。(ひねり)


これは構想です。現実にはないものです。一つのアイデアです。
一年生から系統的にやってみたら・・・という考えで、15分ずつ3回やってみたりと工夫したらどうだろうというものです。担任なら、このような中から自分の学級や学年の実情にあうものを選んでみたり、組合せを変えたり内容を変えたりしてみるとよいかなと思います。実際にやってみて自分の学校に合ったものにできればいいですね。

私自身そのように系統立ててやったことはないし、これがうまくいくかは分かりません。ただ、自分のこれまでの授業の経験と先輩方の資料や話から考えてみたことです。

線の強さや太さについては指導者が場に応じて教えなくてはなりません。
荒木先生の教えてくださった、円を2つ描いて「どっちかが鉄の玉で、どっちかがシャボン玉」の指導は単純明快でした。ちょっとしたことで子どもの心に入る線描指導。自分もそのような物がつくり出せればいいなあと思います。

クロッキーの場合どこから描くかもいろいろ試してみることです。
例えば2年生②の横から見た椅子に座っている姿は、初めて関節を意識させるので
腰や膝から書き始めてみるといいかもしれません。

図工授業Q1〜人物描写の仕方②_c0052304_15455865.jpg

注意してほしいのは、実物そっくりの形に描くことを要求しすぎないことです。教師があまりこだわると、子どもは自信を失い、絵嫌い心を生んでしまいます。

慣れないと体がいびつになったり、途中で終わってしまうかもしれません。最初はそれはそれでよいのです。人の姿を見る力と、どうなっているのかと考える力、それを紙に表す力、を少しでも養うと考えて、楽しく書くことが大事です。そういう気持ちを子どもに持たせるのは、図工教師として力というより、日常の教科指導や学級経営力からくるものです。

集中して線を大切に描くことを伝え、そのことができたらまずその態度を
ほめましょう。そして時間内に書き終えたらそれをまたほめましょう。
その上に表現が豊かであれば、そのよさを認めましょう。



人物描写だけでなく、他のものを見て描くクロッキーも取り入れた方が
効果は上がるでしょう。
例えば低学年では、葉っぱ、生き物など。
   中学年では、やさいやくだもの、花など。
   高学年では、くつ、ランドセルなど。
時間はあまりないでしょうから、どうつくり出すかが担任の工夫です。
(慣れてきたら5分間クロッキーを継続していれるのも手です)

画材は、低ではパス、コンテ。中からはサインペン。高では墨も。

ここでは学年毎の「よく見て描くこと」のめあては省いていますが
いずれそれも合わせて、「形をとらえる学習指導」としてまとめたいと思っています。

以上、クロッキーで人物描写のスキルを育てるという方法で考え、述べてみました。

他に、何かこういう方法があるよ、という方がいおられたら遠慮なく教えてくださいね。

                                西尾KAN

by saibikan | 2014-10-21 05:40 | 図工室経営・図工美術論 | Trackback | Comments(2)
Commented at 2019-10-13 09:34
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saibikan at 2019-10-24 06:27
> anima12321さん
関心持っていただきありがとうございます。退職後も自分の好きなことを仕事にされていること、羨ましいです。私もいずれ何か見つけて新しいことをやりたいです。


創造性あふれる子供のアートの魅力。それはテクノロジーの利用によって、より豊富になる。教育と日常を通して、未来を考える空間。


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